ランクルプラドはディーゼルがイイ理由
2020.09.26
ミドルサイズSUVとして人気のランドクルーザープラド。
現行モデルにはガソリン2.7L 直4とディーゼル2.4L 直4ターボの2種類のエンジンがありますが、アナタならどちらを選びますか?
「プラドにはクリーンディーゼルエンジンのほうが適していると私は思っています」という開発責任者の言葉を聞くと、その真意が知りたくなるでしょう?
■SUVでディーゼルが好まれるワケ
前出の言葉は、2015年6月17日のプラドのマイナーチェンジ時にトヨタが発表したものです。
このとき従来あった4.0LのV6ガソリンエンジンに代わって、新たにディーゼル2.8L直4直墳ターボが投入され、プラドのエンジンはガソリン自然吸気2.7L 直4と、2タイプになりました。
なぜ、クリーンディーゼルターボがプラドに向いているかといえば、その一因は最大トルクを広い低回転域で発生するからです。
エンジンパフォーマンスを比較してみると出力特性が良く分かります。
ディーゼルターボは、最高出力130kW(177PS)/3,400rpm、最大トルク450Nm(45.9kgm)/1,600~2,400rpm、ガソリンは最高出力120kW(163PS)/5,200rpm、最大トルク246Nm(25.1kgm)/3,900rpmです。
注目してほしいのは最大トルクの発生回転で、ディーゼルターボはアイドリングのよりほんの少し高い回転から、広く低回転域で最大トルクが出ています。
さらにディーゼルターボの最大トルクは、従来の4.0Lガソリンの最大トルク380Nm (38.8kgm)/4,400rpmを排気量が小さいのに上回っています。
つまりディーゼルターボは、エンジン回転を上げなくても、低い回転域・速度で力強く進むことを意味します。
いっぽうガソリン(2.7L)は、回転上昇が速く、高回転域で気持ち良く回る特性です。
この特性の違いは使う場所や乗り方で適正が決まると言っていいでしょう。
乗用車のようにオンロードで快適に走りたいならばガソリンが良い選択で、海外でも高回転まで回しきるような場所(中東の砂漠地帯など)では、ランクル200に搭載されているガソリン4.6L V8のようなエンジンが好まれます。
燃費はJC08モードでガソリンが9.0km/L、ディーゼルターボが11.2/11.8km/L。
車両価格はエントリーモデルでガソリン(TX)が360万3600円、ディーゼルターボは422万9800円で、いずれのモデルもエコーカー減税などで約23万3000円優遇があります。
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■ディーゼルエンジンは急激に進化した
ディーゼルエンジンが、すべて優秀だったわけではありません。
2003年10月に東京都を中心とした1都3県で施行されたディーゼル車規制条例のころは、黒鉛を吹く悪の権化みたいな扱いでした。
さらに2014年9月にはヨーロッパで新しい排ガス規制「ユーロ6」が、2017年9月にはさらに厳しいユーロ6d-TEMP/RDE RDE(Real Driving Emissions)になり、ディーゼルエンジンが生き残るには新しいクリーンディーゼルが必要になったのです。
プラドは2007年7月に日本仕様のディーゼルエンジンを廃止、2015年6月に新型クリーンディーゼルエンジンで復活させました。
ランクルファンのなかには、ディーゼル支持者も多くいたので大歓迎されましたが、この新型(1GD-FTV型)は昔のディーゼルエンジンの面影も悪癖もまるでありません。
クリーンで静か、低回転・高トルクという本来の特性だけを残した新世代なのです。
■新型クリーンディーゼルのスゴイところ解説
新しいクリーンディーゼル2.8Lターボエンジンのなにがスゴイのかというと、世界トップレベルの熱効率44%を達成し、好燃費で、発進トルクや加速レスポンスなどが大幅な向上していることです。
これを達成するために高断熱ディーゼル燃焼、小型高効率可変ジオメトリーターボチャージャー(トヨタ内製)、尿素SCRシステムの採用がポイントとなっています。
従来のディーゼルエンジンはガソリンエンジンよりも高圧縮比(18~22:1)でしたが、トヨタの新型クリーンディーゼルターボは15.6:1と低く、かといって流行の低圧縮比ディーゼルよりも少し高いという絶妙な圧縮比になっています。
簡単に言うと、あまり高くない圧縮比は高度4,500メートル以上や-40℃の低温という過酷な環境にも適応させるための最適値で、燃焼時の冷却損失を低減させる燃焼改善技術Thermo Swing Wall Insulation Technology(TSWIN)を取り入れた高断熱ディーゼル燃焼のエンジンなのです。
■細部にこわだわることで達成できた超一流の環境性能
ガソリンエンジンとまったく違う形をしたピストンクラウン外側の縁部分には、断熱性、放熱性の高いシリカ強化多孔質陽極酸化膜(SiRPA)をコーティングしてあって、燃焼時の冷却損失を最大約30%低減させています。
燃料噴射はコモンレール式直噴で、制御された高圧噴射を行います。
噴射は大きく分けてパイロット、メイン、アフターの3段階で、パイロット噴射は急激に温度が上がらないようにするもので、あのディーゼルエンジン特有の音(メイン噴射時の燃焼音)を低減させるのに非常に効果的です。
メイン噴射は噴射時間が長く噴射量も多く、このときピストンクラウンの外周近くに設けられた凹んだ部分に充分に燃料が行き渡るようにしています(燃焼室内の旋回流による効果)。
そして自己着火し爆発・燃焼。 さらにアフター噴射(短く微量)して燃焼室中央部を使い切り無駄なく燃焼させます。
つまり電子制御や解析技術が進化したからこその構造であり、装備と言えます。
■クリーンディーゼルに投入されたその他の最新技術
高効率低流動吸入ポート(吸気ポート)は、吸入空気をあえて低い速度として吸入時の損失を減らして効率良く吸入量を増やすことを狙った構造です。
低回転域から効き、加速も良い可変ジオメトリーターボは、小型タービンの外側に可変ベーン(羽根)があって、これでタービンに当てる排気ガスを制御して式燃焼温度のコントロールをしています。
また、新開発インペラでアクセル操作に対するレスポンスが向上。
小型ターボなので低回転域から効きが良く、可変ベーンで全域で高効率宇で過給するようにしています。
エンジンと同時開発された小型ターボは従来型より約30%のダウンサイズも実現してします。
吸入、燃焼とくれば、最後は排気です。
このディーゼルエンジンでは、エンジン側から順に酸化触媒(炭化水素、一酸化炭素を効率よく酸化)、DPR触媒(ディーゼルエンジンの排気ガス中の粒子状物質PMをろ過し低減)、尿素SCR触媒(ディーゼルエンジンの排気中の窒素酸化物NOxを浄化)という3つの触媒を装備して、排気ガスを浄化させています。
とまあ、ここまで専門的な視点でプラドのクリーンディーゼルターボを解説してきましたが、簡単に言ってしまえば、環境に優しく、静かで、燃費が良く、小さく、幅広い回転域で高トルクで、発進も加速も力強く(6ATトランスミッションも効果的です)、レスポンスが良く、高速巡行も快適なエンジンということです。
発進加速や燃費はハイブリッドも優れていますが、過酷な環境下でも安定した性能を出せ、しかも頑丈かというロバストネス(頑強性)では、クリーンディーゼルターボが現在でも優位(この系統のエンジンは世界中で使われますから)。
日本で使うSUVのエンジンとしても最適です。
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