『スバルのSTIってなんですか?』
2020.10.31
スバル車のラインアップには、STIというモデルが用意されています。
STIは、スバルのレース活動を支えるチューニングファクトリーであり、パーツ開発を行う子会社で、スバル・テクニカ・インターナショナルの頭文字を取ったものです。
その名前が冠されたスバル車は、独自のチューニングが施され、上質かつ高性能なコンプリートカーとして限定販売されることで、マニア垂涎のモデルとなっています。
そんなSTIの歴史や活躍、コンプリートカーについて紹介します。
■STI設立の歴史と経緯
1972年、スバルはオーストラリアのサザンクロスラリーにFFのレオーネで初参戦。
その後、1977年にロンドン−シドニーラリー、1980年にはサファリラリーにレオーネ4WDで挑戦し、モータースポーツ活動が本格的に始動します。
STIは、最初のサザンクロスラリーでコ・ドライバーを努めた久世隆一郎が社長となって、1988年に設立されました。
その後も、スバルはサファリを中心に経験を重ね、1990年からレガシィでWRCへ本格的に参戦を開始。
このレガシィ、そして後継のインプレッサのWRCでの活躍が、STIの名を一躍有名にしました。
特にインプレッサは、1994年に年間3勝、翌1995年から1997年まで、3年連続でマニュファクチャラーズタイトルを獲得。
その余勢を駆って1994年には、初のコンプリートカー「インプレッサ WRX STi」が市販化されます。
このコンプリートカーは、ラリーの旗艦インプレッサを中心に毎年のように用意されることになるいっぽうで、STIの認知が広まるにつれて、ライトチューン版の「tS」や「tuned by STI」が他のモデルにも用意されるようになりました。
■モータースポーツでの活動
1990年から、レガシィでWRCに本格参戦したスバルは1993年に初優勝。
その後、インプレッサで1995年から1997年にかけてマニュファクチュアラーズタイトルを3年連続で獲得するなど、ブルーのボディカラーにメインスポンサーであった555の組み合わせは人々に鮮烈な印象を残しました。
2008年にWRCから撤退するまで、スバルの優勝した回数は47回、そのうちインプレッサが46回と圧倒的な強さもインプレッサ、ひいてはSTIの知名度を高めました。
WRC撤退後、STIのモータースポーツ活動は、市販ツーリングカーによる過酷な耐久レース、ニュルブルクリンク24時間レースに軸足を移します。
STIが仕立てたインプレッサは、2011年、2012年、2015年、2016年、2018年、2019年に、クラス優勝を成し遂げます。
いっぽう国内では、全日本GT選手権へ2005年から参戦しており、それぞれのレースで培われた技術はコンプリートカーやパーツ開発に反映されています。
■STIのコンプリートカーとは?
STIは、モータースポーツの世界で素晴らしい成績を残し、その技術力が世界に知られるようになりました。
もちろんその技術はスバルの市販車にもフィードバックされるわけですが、走ることを愉しむ方のためにSTIはコンプリートカーを用意しています。
市販モデルをベースとしたいわばメーカー公認のチューニングカーとも言える存在で、もちろんそのまま競技に持ち込んでも高いパフォーマンスを発揮するほどの性能を有しています。
とはいえ、タイムを削る目的でピーキーにチューンするとか、限界走行でのみ発揮される硬い足回りやブレーキを装着するといった過激なチューニングを目指しているのではありません。
STIが大切にするのは「ドライバーの意思通りに動かせるクルマであるか」ということ。
理想とする走りは、身体を動かすスポーツの醍醐味に通じるものです。
その結果、生まれたSTIモデルは、サーキットのような限られた場所だけでなく、普段の走り慣れた道や街中など、クルマと過ごす日常の中でも走りの悦びが実感できるよう、高いバランスのもとにチューニングされているのです。
■SUVにもSTIモデルがある
たとえば2001年に登場のフォレスター STI Ⅱタイプ Mや、2004年のフォレスター STi バージョンなど、SUVにもSTIコンプリートカーが存在します。
比較的近年では、2010年にフォレスターのSエディションをベースとした『フォレスター tS』が登場しました。
STIチューニングの前後ダンパーと15mm車高を下げるコイルスプリング、タワーバー、ブッシュ類など細部に施したチューニングにより、重心の高いフォレスターでも気持ち良いハンドリングを実現しています。
2012年には、7人乗りのクロスオーバーSUVであるエクシーガのコンプリートカー『エクシーガ tS』が登場。
こちらは多人数乗車モデルに求められる乗り心地や静粛性を犠牲にせず、ドライバーや後席を含む同乗者に「走る愉しさ」を提供するため、専用のサスペンションを含めたシャシーチューニングが施されました。
ブレーキシステムにはブレンボが採用され、ハードな走りにも応えてくれます。
4代目フォレスターをベースにした『フォレスター tS』は2014年の登場。
こちらは前後専用ダンパー、スプリング、BBS製鍛造19インチホイール、ブレンボブレーキシステムなどが搭載されています。
またエンジンコントロールユニットにも手が加えられ、爽快な加速感とキレの良い走りを実現しています。
2016年には、2.0L 水平対向エンジンにモーターを組み合わせたXVのハイブリッドモデルをベースにした『XV ハイブリッド tS』が期間限定で登場しました。
STIコンプリートカー定番の専用チューニングに加え、オレンジ色のステッチでカラーコーディネートされたインテリア、オレンジピンストライプを施したフロントスポイラー、サイドアンダースポイラーなど、おしゃれでカジュアルスポーティなカラーリングも印象的です。
水平対向エンジンにAWDという、独特のドライブトレーンが生み出す優れたハンドリング性能が魅力のスバル車ですが、そのポテンシャルをさらに引き上げたSTIのコンプリートカーは、マニア垂涎のお宝モデルとなっています。
すべて限定で販売されたため、中古車市場ではタマ数が極端に少ないのが実情ですが、これを読んで気になった方は、根気よく探してみましょう!