個性的なホンダのSUV4選
2020.08.27
ちょっと時代を先取りし過ぎていたり、独創的過ぎるアイディアがユーザーにいまひとつ理解されなかったりして、ホンダにはそんな惜しくも消えていったモデルがあります。
どれも、いまあったらイイのに!! という感じがするのは、なぜでしょう。
でも、こんな楽しいモデルたちの存在が、現在のSUVブームの根底にあるのです。
■初代CR-V 〜コンパクトなのにウォークスルーできるユニークSUV 〜
※画像は第5世代です。
CR-Vは第1世代が1995~2001年、第2世代が2001~2006年、第3世代は2006~2011年、第4世代が2011~2016年(海外は2018年まで)、第5世代が2016年(国内では2018年)~というSUVです。
特にユニークだったのは「セダンのもつ爽快な走りや快適な乗り心地」を基本に「ワゴン並のユーティリティ・スペース」、「クロスカントリー4WD車の機動性」、「機能と安心の新デザイン」を開発テーマに登場した第1世代で、オデッセイに続くホンダ・クリエイティブ・ムーバー第2弾でした。
5人乗り全長4,470mm×全幅1,750mm×全高1,675〜1,705mmで、ベースはシビックなので車体はモノコックです。
サスペンションは4輪独立懸架(ダブルウィッシュボーン)と、当時のSUVとしては独特でした。
エンジンは、ガソリン2.0L 横置き直4DOHC16バルブ(最高出力130PS、最大トルク19.0kgm)で電子燃料噴射PGM-FIです。
4WDシステムはホンダ独自のものでリアルタイム4WDデュアルポンプシステム式。
これは前後に独立した2つの機械式ポンプを持ち、通常走行はFF(2WD)で、前輪が空転し出すと、前後ポンプの回転差で生まれた油圧でクラッチを繋ぎ後輪へも駆動力を伝える仕組みです。
その後、デュアルポンプ式4WD はワンウェイカムユニットとパイロットクラッチを追加され、前輪の空転検知能力が向上しました。
トランスミッションは4ATで、セレクターはコラム式。
さらにパーキングブレーキもフロント側にあるステッキ式として、センターコンソールを廃して前席~後席間をウォークスルーにしました。
リアシートはシートバックを倒し、クッションをチルトアップさせることでホイールハウスの影響を受けずにフルフラットに。
荷室容量は374Lで、リアシートを倒すと668Lとなります。
テールゲートは、上開きのガラスハッチと横開きのロアゲートの2分割という珍しい構造です。
1997年に5MTが、1998年にFFが追加。
このように第1世代CR-Vは、他にはない、他を真似しないというホンダらしいアイディアと独創性満載のSUVでした。
■Z 〜ミドシップエンジンのスポーティ軽4WD〜
ホンダの“Z”は、初代(1970~1974年)がハッチバックスタイルだったのに、1998年に復活した2代目(1998~2002年)は一転してスポーティなSUV(4人乗り)となりました。
エンジン搭載位置は、スポーツカーのようなミドシップで、ホンダはアクティなど軽トラック/バンにもこのアンダーフロアミドシップを採用していいます。
理由は重量バランスとトラクションに優れているから、結果、Zの前後重量配分は50:50となっていました。
エンジンは自然吸気の0.66L 直3SOHC12バルブと、そのターボ付き(最高出力64PS)の2タイプ。
いずれもホンダが独自に設定したガソリン自動車の低公害基準HONDA LEVに基づくクリーンエンジンです(CO、HC、NO2排出量を日常的に従来の1/10程度まで低減)。
トランスミッションは4MTで、駆動方式はホンダ独自のリアルタイム4WDで、リアデファレンシャルはオプションでヘリカルLSDも用意していました。
サスペンションはフロントがマクファーソンストラットで、リアが5リンクリジッドアクスルという組み合わせで、当時の軽自動車としては大径な15インチタイヤを装着。
「Small is Smart.」というコンセプト通り、小さいけれども元気な走りは魅力的でした。
現在ならもっと注目された軽SUVでしょう。
■HR-V 〜1.6LのコンパクトSUVは安全性も世界水準〜
ホンダが当時提唱していた”Small is Smart.”コンセプトのもとに、いままでにない”楽しさ=JOYFUL”を提案する楽しい創造車「J・ムーバー」の第2弾が、HR-V(1998~2006年)です。
全長3,995mm(3ドア)/4,095mm(5ドア)×全幅1,695mm×全高1,580mmの、ワゴンでもクロカンでもないコンパクトSUVですが、スタリングは足長背高のステーションワゴンスタイルです。
エンジンは横置き1.6L 直4SOHC12バルブで、VTEC(可変バルブタイミング・リフト機構)仕様もありました。
どのエンジンもクリーンなHONDA LEV仕様です。
駆動方式はFFとリアルタイム4WD(デュアルポンプ式)で、トランスミッションは5MTと無段階変速ATが用意。
ATの「HMM-S」は、スイッチで通常走行用Dモードと、Sモードの設定が簡単に行えました(JS4タイプはDとS1とS2の3ポジションタイプ)。
ボディは事故の際に搭乗者や歩行者への衝撃を減らすG-CON(衝突安全設計ボディ)で、これは当時世界最高水準の衝突安全性でした。
■エレメント 〜観音開きの両サイドドアを持ちマリンスポーツに最適SUV〜
日本では2003~2005年というわずかな期間しか販売されないエレメントですが、北米では2002~2011年に販売され人気があったモデルです。
アメリカで開発・生産されたモデルで、日本に輸入されました。
特徴は、なんといってもセンターピラーレス構造と両側観音開きのサイドアクセスドアです。
開口部は高さ1,140mm×幅1,550mmの大きさで、テールゲートも上下2分割。
室内は防水仕様で、後席を倒せば10フィートクラスのロングサーフボードも積めるという長さ・広さで、アストドアスポーツには最適でした。
デザインイメージは、若者が集う「ライフガードステーション」で、空や海と一体になるような開放感を大切にしており、カラーリングも自然界にある色をテーマにサンセットオレンジ・パールを含め全5色を用意していました。
日本仕様は、ボディ下部に樹脂製クラディング(無塗装)を採用。
ボディサイズは扱いやすい全長4,300mm×全幅1,815mm×全高1,790mmで、エンジンはガソリン2.4L 直4DOHC16バルブi-VTECでした。
ミニバンに近い5人乗りのアウトドアレジャーにも使えるクロスオーバーSUVは、いまこそカタログに欲しいパッケージ。
これも時代がちょっとは早過ぎた感じです。
軽トラック/バンのフロアを流用したミドシップのSUVや、ミニバン+SUVのパッケージなど、SUV全盛のいまだからこそ、ヒットしそうなモデルがかつてのホンダにはありました。
ホンダらしいといえばそれまでですが、これらはエンジンのダウンサイズや衝突安全性の見直しで、現代でも十分通用するように思います。