CX-5の前に誕生していたクロスオーバーSUV「CX-7」
2020.05.10
マツダCX-5やCX-30は、人気のクロスオーバーSUVです。
スタイルだけでなく、スカイアクティブ技術がもたらす走りの楽しさや環境性能が支持されているのもその要因です。
でも、これらCXシリーズに、素晴らしいスポーツクロスオーバーSUVがあったことを覚えていますか?
そう2006年12月にデビューしたCX-7です。
■スポーツカー+SUVのNEWコンセプト
CX-7のコンセプトは明快で、スポーツカーとSUVを融合させたスポーツクロスオーバーSUVというものでした。
そのため開発要件は、内外ともスポーティで躍動感にあふれた上質なスタリングであること、パワフルなエンジン、快適なオンロード性能、正確なハンドリング、雨・雪・フラットダートなどの悪条件下での安定性、実用的なユーティリティなど多岐にわたって高いものが掲げられました。
現代のSUVならありそうですが、2006年当時ではかなり意欲的。
スポーツカーのRX-8とミニバンのMPVを足して、さらにオフロード性能も加えたモデルという感じです。
ボディサイズは、CX-5よりほんの少し大きい全長4,680㎜×全幅1,870㎜×全高1,645㎜で、最低地上高はSUVらしく205㎜も確保しています。
■車高が高い純スポーツカー!?
キーワードは、“Sporty! (速そうな)、Sturdy!(力強い)、Sleek!(滑らかな)。
スポーツカーのマツダらしさを、SUVでも表現しています。
大きく寝かせたフロントウインドーや、流麗でスムーズなルーフラインなどはまさにスポーツカーで、5ポイントグリルはブランドアイデンティティです。
そこに大きく張り出した前後フェンダーや、リアフェンダーの前から強く跳ね上がるようなベルトライン(サイドウインドーの下側のライン)など、SUVらしい力強さも盛り込まれました。
リアビューはハッチバックスタイルのなかに流麗さが感じられ、左右2本のマフラーがスポーティさを出しています。
ひと時代前のクルマとは思えず、現代的なデザインで、カラーリングも現在のソウルレッドクリスタルメタリックとは違いますが、レッド系のカッパーレッドマイカをキャッチに使うなど、マツダ新時代の幕開け的なモデルでした。
■スポーティかつ快適な室内装備
インテリアは、スポーティさと上質の居住性を求めたもの。
特徴的なインパネのデザインは、メーターフードとパネル全体を覆うルーフを別にしたダブルルーフ構造で、丸型スピードメーターを中心とした配置・デザインはスポーツカーに通じるものです。
バケットシート(前席)、本革巻の3スポークステアリング、通常のSUVより素早いシフト操作ができるよう、上方にセットされたシフトレバーなど、スポーツカーライクな楽しみを持たせています。
いっぽうで、ラゲッジスペースはリアシート使用時で455L(ゴルフバッグ3個分)あり、リアシートを前方に倒せばさらに大容量を確保できます。
リアシートは60:40分割式でリアシート中央を倒せば1,700㎜のラゲッジ長になります。
室内は外装(エクステリア)同様に流れを感じさせる面や線で構成されていて、とてもスタイリッシュです。
これが認められ、北米でインテリア・オブ・ザ・イヤーを受賞しました。
■強力なパワーユニット+フルタイム4WD
エンジンはスカイアクティブ前夜のユニットで、フロント横置きガソリン2.3L 直4DOHC直噴ターボ(MZR 2.3L DISIターボ)です。
2,000rpmから4,500rpm までのほぼフラットなトルク特性で、低回転域から素晴らしいレスポンスと加速性能を発揮。
最高出力175kW(238PS)/5,000rpm、最大トルク350Nm(35.7kgm)/2,500rpm。電子制御6速AT(アクティブマチック)は、シフトレバーを軽く前後に動かすだけでスポーティな変速も可能です。
駆動方式はFFとフルタイム4WD。後者に採用されるアクティブトルクコントロールカップリング4WDシステムは、FF状態から後輪に最大50%のトルクを、路面状態などを感知して自動的に配分します。
ABSやDSC(ダイナミック・スタビリティ・コントロールシステム:横滑り防止機構)とも協調制御するので、安心してドライブを楽しめます。
■高剛性ボディと作動性の良いスポーティサス
モノコックとサブフレームは、非常に高剛性です。
たとえばアンダーボディの前後方向に直線的に通したメインフレームや大断面クロスメンバーは、ボディ全体を高剛性にします。
サスペンションは、フロントにマクファーソンストラット、リアはマルチリンク…と記されるとなんだか普通に思えますが、細かく見ていくと凝った仕様であることがわかります。
フロントのショックユニットはダンパーとスプリングの中心線をオフセットさせ、横力が軽減され、ダンパーがスムーズに動くようにしてあります(スプリングオフセットタイプ)。
リアはスプリングとダンパーを分離してフロア下に配置し、ダンパーの摩擦抵抗を低減。高剛性ボディとしなやかに作動するサスの効果は、SUVとは思えないスポーティなハンドリングをもたらしていて、これはCX-7の大きな特徴です。
ブレーキディスクも前後ベンチレーテッドで安定した高い制動力を発揮します。
国内でCX-7は2006年12月にデビューし、2012年に販売終了。途中2009年にマイナーチェンジを実施。
NHV性(騒音・振動・ハーシュネス:路面からの突き上げなど)を低減するチューニングを行い快適性を向上させましたが、CX-7らしいスポーティさは維持されています。
スカイアクティブ世代以前のモデルですが、マツダの本気作。中古車でも狙い目です。